Classici giapponesi con furigana
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にじのはし
虹の橋
久生 十蘭
Leggi 虹の橋 (にじのはし) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.038 caratteri · 30 schermate
フサは蒲団の端をさぐると、居なりのまま膝をまわし、裾も乱さずにゆらりと蒲団の上に長くなった。あさひは小掻巻をかけ、枕元のきまった場所へ煙草入れと笹飴の鑵を置いた。
「おしもはいいんですか。煙草も飴もここにありますから」
「うむうむ」
笑皺がおさまって静かな顔つきになったので、そっと立ちかけると、なにか思いだしたように、フサがしみじみした調子で呟いた。
「いまでも、時々あなたの夢を見ることがあるのよ。遠いところにいるあなたの夢を」
「あたし、ここにいるじゃありませんの」
落着いて言いかえしたつもりだったが、動悸がして語尾が嗄れた。
「どこだかわからないけど、遠いところにいて、いつ逢えるだろうなんて思っている、そんな夢……眼をさまして、そうそう、千代はもう帰っているんだっけ、やれやれ、よかったと思って、ほっとするの」
屈託のない、おおまかなひとだが、鷹揚すぎて心の中を測りかねる。千代、千代と呼んでいるが、ほんとうに千代だと思っているのか、承知で欺まされているのか、そのへんのところがわからない。ひがんでとれば、いまの言葉も、千代はどこか遠いところにいる、あたしはちゃんと知っているんだよと、遠まわしに仄めかしているのだと思える。