Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

したがってそんな疑いを挟さむ余地がなかった。あってもその原因が第一不審であった。

「だって宅中で兄さんが一番大事な人じゃありませんか、姉さんにとって」

「だからさ。御母さんには訳が解らないと云うのさ」

自分にはせっかくこんな景色の好い所へ来ながら、際限もなく母を相手に、嫂を陰で評しているのが馬鹿らしく感ぜられてきた。

「そのうち機会があったら、姉さんにまたよく腹の中を僕から聞いて見ましょう。何心配するほどの事はありませんよ」と云い切って、向の石垣まで突き出している掛茶屋から防波堤の上に馳け上った。そうして、精一杯の声を揚げて、「おーいおーい」と呼んだ。兄夫婦は驚いてふり向いた。その時石の堤に当って砕けた波が、吹き上げる泡と脚を洗う流れとで、自分を濡鼠のごとくにした。

自分は母に叱られながら、ぽたぽた雫を垂らして、三人と共に宿に帰った。どどんどどんという波の音が、帰り道中自分の鼓膜に響いた。

十五

その晩自分は母といっしょに真白な蚊帳の中に寝た。普通の麻よりは遥に薄くできているので、風が来て綺麗なレースを弄ぶ様が涼しそうに見えた。

「好い蚊帳ですね。