Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじん

行人

夏目 漱石

Leggi 行人 (こうじん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 224.801 caratteri · 452 schermate

Aozora Bunko

宅でも一つこんなのを買おうじゃありませんか」と母に勧めた。

「こりゃ見てくれだけは綺麗だが、それほど高いものじゃないよ。かえって宅にあるあの白麻の方が上等なんだよ。ただこっちのほうが軽くって、継ぎ目がないだけに華奢に見えるのさ」

母は昔ものだけあって宅にある岩国かどこかでできる麻の蚊帳の方を賞めていた。

「だいち寝冷をしないだけでもあっちの方が得じゃないか」と云った。

下女が来て障子を締め切ってから、蚊帳は少しも動かなくなった。

「急に暑苦しくなりましたね」と自分は嘆息するように云った。

「そうさね」と答えた母の言葉は、まるで暑さが苦にならないほど落ちついていた。それでも団扇遣の音だけは微かに聞こえた。

母はそれからふっつり口を利かなくなった。自分も眼を眠った。襖一つ隔てた隣座敷には兄夫婦が寝ていた。これは先刻から静であった。自分の話相手がなくなってこっちの室が急にひっそりして見ると、兄の室はなお森閑と自分の耳を澄ました。

自分は眼を閉じたままじっとしていた。しかしいつまで経っても寝つかれなかった。しまいには静さに祟られたようなこの暑い苦しみを痛切に感じ出した。