Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しゅみのいでん

趣味の遺伝

夏目 漱石

Leggi 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 38.235 caratteri · 77 schermate

Aozora Bunko

徹頭徹尾ワーである。結晶した精神が一度に破裂して上下四囲の空気を震盪さしてワーと鳴る。万歳の助けてくれの殺すぞのとそんなけちな意味を有してはおらぬ。ワーその物が直ちに精神である。霊である。人間である。誠である。しかして人界崇高の感は耳を傾けてこの誠を聴き得たる時に始めて享受し得ると思う。耳を傾けて数十人、数百人、数千数万人の誠を一度に聴き得たる時にこの崇高の感は始めて無上絶大の玄境に入る。――余が将軍を見て流した涼しい涙はこの玄境の反応だろう。

将軍のあとに続いてオリーヴ色の新式の軍服を着けた士官が二三人通る。これは出迎と見えてその表情が将軍とはだいぶ違う。居は気を移すと云う孟子の語は小供の時分から聞いていたが戦争から帰った者と内地に暮らした人とはかほどに顔つきが変って見えるかと思うと一層感慨が深い。どうかもう一遍将軍の顔が見たいものだと延び上ったが駄目だ。ただ場外に群がる数万の市民が有らん限りの鬨を作って停車場の硝子窓が破れるほどに響くのみである。余の左右前後の人々はようやくに列を乱して入口の方へなだれかかる。見たいのは余と同感と見える。余も黒い波に押されて一二間石段の方へ流れたが、それぎり先へは進めぬ。