Classici giapponesi con furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Leggi 道標 (どうひょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 846.457 caratteri · 1672 schermate
夜更けの沈黙が、やや古風な家具調度の明るく照らし出されたアパルトマンの客室にみちた。その沈黙をつたわって、ペレール広場で路面の停車場へ出る地下電車の轟音が遠くから響いて来る。
「お父様、こんどの旅行について、いくらか陶器を手離しになった?」
「ああ、かなり売ったよ」
「どれを?」
「『せきれい』と『牡丹』が主なものだ。――あとはお前知るまい」
どっちも十客揃いの中皿と大皿で、その図がらから『せきれい』『牡丹』とよばれている鍋島の逸品であった。泰造の蒐集のなかでは、参考品としての価値以上に好事家の間に評価されていた品々だった。
「あんなものも、いずれ保の役にでも立つだろうと思って持っていたようなもんなんだから、まあ、いいさ」
そういう父の頭をだまってマッサージしながら、伸子は涙ぐんだ。年とって保に死なれた親たち夫婦のこころもちには、まだ人生の前方ばかりを見はっている伸子や、生活を保証された長男の若夫婦である和一郎たちに、うかがいしれない微妙な動機がこもっている。嘱望していた次男の保のためにと心がけていたものを、おそらくは多計代が主唱して、自分たち夫婦で使ってしまうことにしたのだ。