Classici giapponesi con furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Leggi 道標 (どうひょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 846.457 caratteri · 1672 schermate
七
「七十五銭?――六フランとちょっとだな。……しかし、どこからその七十五銭てきまりが出たんです?」
「吉見さんが、九十九円七十五銭の小切手をくれたんです。そのしっぽの七十五銭というわけなの」
伸子がおもしろがって、二人で六フランという粗末なひるめしを計画するには、わけがあった。吉見素子はこれまで翻訳ではいくつかの仕事をして来ていたし、その力量にも一定の評価をうけていた。けれども、自分で書いた創作も評論もなかった。わたしは、翻訳だけしか出来ない人間なのかい、そんなのいやだよ。駒沢に暮していた時分にも、折々素子がそう云うことがあった。ぶこちゃんが書くひとなのが、その点ではよし、あしだ。知らず知らず、わたしはすくんじまう。
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来てからも、素子は何もかかなかった。どうして? それほど文学ニュースを知っていて、もったいないのに。書けば、みんなの役に立つのに。ロシア語がよく出来ない伸子は、時には素子の雑談さえ、日本へしらせればいいのに、とすすめた。それでも何一つ書かなかった素子が、この夏、伸子といっしょにロンドンへ行って、そこから先に一人でモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ帰って来てのち、ソヴェト文学の最近の動向についての評論をかいた。