Classici giapponesi con furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Leggi 道標 (どうひょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 846.457 caratteri · 1672 schermate
精神も肉体も軟かく開放されてくつろいでいる。
そのとき素子は、クリーム色地に水色とさっぱりした緑色の縞のパジャマ姿で、自分の室の窓から内庭の辻音楽師を見下していた。内庭をかこんだ建物の窓は大部分あいていて、その一つの窓から赤いブラウスを着た女が、いつかの夕方デュトへゆく途中で見たように、大きく窓から半身のり出させて、同じように内庭を見下している。辻音楽師はさっきから、もう三度もくりかえしてワルツだのタンゴだのを鳴らしていたのだった。どうしたのかどこの窓からも小銭を投げるものがない。素子は、自分が小銭をやろうかという気になった。テーブルの上においてあるハンド・バッグに目をやった。が、そのまままた内庭を見下した。年とった乞食音楽師は、古びたソフトをかぶって、ごみっぽいシャツの胸にダラリと赤いネクタイをたらし、忍耐づよく内庭のコンクリートへ目をおとしたまま、一本脚の上に立っているオールゴールのハンドルをまわしているのだった。
素子には、七階の高いところから、井戸の底のように見える内庭に立っている一人の人物に向って、小銭を投げてやる、という動作に、不自然があった。