Classici giapponesi con furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Leggi 道標 (どうひょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 846.457 caratteri · 1672 schermate
明るい静かな光線が小さい室の白い壁いっぱいにさしていた。テーブルの上のコップに、紫苑の花のような野菊と、狐のしっぽのような雑草とがさしてある。コップにさしてある雑草はあの日に、遠い野原で伸子が自分でつんだものだった。すべてのことが、はっきり伸子に思い出されて来た。八ガツ一ヒタモツドゾウチカシツニテシス。――保は死んでしまった。波のようなふるえがシーツにくるまって臥ている伸子の下腹から全身に立った。八ガツ一ヒ。鋭い刃もので胸をさかれる悲しさがあった。ドゾウのチカシツ。――
胸に手をやって痛いところを抑えずにいられないほど悲しさは鋭いのに、伸子の眼からは不思議にもう涙がでなかった。そのかわり、まるであたりの空気そのものが悲しみそのものであるかのように、ちょっと体を動かしても、首をまわしても、伸子は息のつけないような悲しみのいたさを感じるのだった。
足もとのドアがそっと開けられた。素子が入って来た。眼をあけている伸子をみると、
「めがさめた?」
素子が強いてふだんの調子をたもとうとしている言いかたでベッドに近づいて来た。
「大分眠ったから、もう大丈夫さ。――気分ましだろう?」