Classici giapponesi con furigana
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そらとぶあくま
酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕
酒井 嘉七
Leggi 酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕 (そらとぶあくま) di 酒井 嘉七 (さかいかしち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.471 caratteri · 28 schermate
死体の処置をすませて、静かに煙草の輪を吹いた自分と、あの時のシーンとが何故か思い出される。
薄い靄は自分が小川の上流を散策しているうちにすっかり消えてしまった。もう太陽は高いであろうに何時の間に曇ったのか、田畠も農家もどんよりとして薄い鉛色の気体に包まれている。と、傍らにうず高く積み上げられた堆肥の向うから飛び出すような勢いで私の前に黒い影が突進した。――彼である。彼は何時ものように私の前に両足をふんばって突っ立ったまま、私の面を凝視した。複雑な表情である。私もじっと彼を見つめたが、それは彼が赤沢荘三郎の子息に相違ないという自分の推断を確実にするためだった。三分……四分……。私は口を開いた。
「赤沢荘三郎さんの御子息ですね」
「そうです」
彼は重々しく答えた。
「私はあなたとお話したい。御都合がよろしければ、明朝私の住家においで願いたい」
「承知しました。私はあなたからの何らかの発言を希望していました。そして、今日その目的を達しました」
彼は言葉のまだ終らないうちに、踵を返すと小川の上流に急ぎ足で歩いて行った。
「清々しい新緑といいますが、さーッと来て、すーッと晴れ上った後の緑ほど美しいものはありませんね」