Classici giapponesi con furigana
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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
Leggi 野菊の墓 (つげびと) di 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 34.955 caratteri · 71 schermate
六
こればかりは親の力にもおよばないとはいうものの、むすめが苦悶のためにおもざしまで変わったのを見ては、実の親として心配せぬわけにはゆかない。結局両親は自分たちの隠居金を全部むすめにあたえて、
「ふたりの男の子をせい一ぱい教育しなさい、そうしてわが世をあきらめて、ふたりの子の出世をたのしめ」
とさとしたのである。糟谷の妻もやっと前途に一道の光をみとめて、わずかに胸のおさまりがついた。長らくのくもりもようやくうすらいで、糟谷の家庭にわずかな光とぬくまりとができた。家畜衛生会のほうもそうとうに収入がある。ただ近隣から、
「糟谷の奥さんは陰気な人ねい」
といわれるくらいのことで六、七年間はうすあたたかい平穏な月日を経過した。
長男義一は十六才になって、いよいよ学問はだめだときまりがついた。北海道に走って牧夫をしている。三里塚の両親も相ついで世を去った。跡取りの弟は糟谷をばかにして、東京へきても用でもなければ寄らぬということもわかった。細君の顔はよりはなはだしく青くなった。
六
十一月も末であった。こがらしがしずかになったと思うと、ねずみ色をした雲が低く空をとじて雪でも降るのかしらと思われる不快な午後であった。