Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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のはぎ

野萩

久生 十蘭

Leggi 野萩 (のはぎ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.480 caratteri · 21 schermate

Aozora Bunko

芦田とかいう参謀が、電話でしらせてよこしたの。引揚船が海防に寄ったとき、司令部にいる友達と約束ができていたような話だったわ」

安は天井を見あげるような恰好で、だまって聞いていたが、

「若旦那は、もう日本へは帰って来ないつもりなんだね」

といいながら、顔をうつむけたひょうしに、キラリと光るものがひとつ膝のうえに落ちた。

「いずれはこうなるものと、初っから、ちゃんとわかっていた。あのひとの思いの残っている土地を、見捨てる気はさらさらないんだから、戦争がすんだら、そのままあちらへ戻るつもりなんだ。若旦那は日本へ帰って来ないといったわね。嘘じゃなかったでしょう」

「でも、どうしてこんな末のことまで見ぬいていたの?」

「若旦那と幹さんの奥さんのことは、ずうっと前に知っていた。あんなふうに、世間をだますようなことをしているんじゃ、いい終りはしなかろうから」

「巴里へやってきたのは、二人を別れさせるつもりだったわけ?」

「あんなところまで出かけて行くからには、もちろん、そのつもりだったのさ。若旦那のことなんか、けぶりにも口に出しはしなかったんだけど、マルセーユのレストランで食事をした短い間に、幹さんの奥さんは、こちらの気持を察しておしまいになったんだろう。