Classici giapponesi con furigana
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きんろう
金狼
久生 十蘭
Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate
どうしてもはいる気がしない。……そのうちに、意地にも我慢にもやりきれなくなって、平久町まで駆け戻って、あそこから洲崎の灯を見ると、ようやく人心地がついた。……今にして思えば、多分あのころは、内部じゃ殺しの真最中だったんだろう。……ありていに申しあげると、こういうわけなんだ。嘘も……偽りもない。……どうか妄執を晴らして……小生だけは、助けてくれ……」
本気か冗談か、手を合せた。乾はニヤリと笑って、
「知ってるよ。……ひとが悪いようだが、大体は知ってたんです。……でもねえ、あんたの口からきいて見ないことにゃ……」
と、いいながら、堀のほうへ眼を移した。途端、なにを見たのか、うむ、と息をひいた。
ひきあげた四手網の目から、ポタポタと滴がたれる。網のなかに、丸く束ねたぼろ布のようなものがはいっていた。
「オーイ、旦那ア、なんか出たぜえ」
腐ったようなシャツを着た白髪頭のルンペンが、それを両手にかかえて岸のほうへ駆けてきた。
念いりにくくった針金をといて、地面のうえにひろげる。地色はもうわからないが、支那縮緬の女の服だった。そのなかに富士絹の白い下着。棒きれの先でひろげて見ると、地図をかいたように血の汚点がべっとりとついていた。