Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きんろう

金狼

久生 十蘭

Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate

Aozora Bunko

……どうです。それでもまだご異存がありますか。……(急に調子をかえて)だからさ、どの位あったか知らないが、当然手にはいっていたものを、むざむざ横あいからひっ攫われたかと思うと、あたしあそれが残念で、いても立ってもいられないんだ。……(卓の上へ両手をついて、三人のほうへ身体をのりだすと)あたしあ、巳年生れでね。これで、嫉妬心もつよければ、また、ずいぶん執念も深い性なんだから、こんな目に逢わされてだまって引っこんでるわけはない。……あたしの手で、いまにきっと、そいつをとっちめてやるつもりなんだ。……なアに、どうせ長いあとのこっちゃアありゃしない。……いまに見てろい、どんな目を見るか! ぬすっとめ!」

そういうと、急にぐったりと、卓の上へ頬杖をついて、うわごとのように、なにかぶつぶつつぶやきはじめた。酔態としても、これはかなり異様なものだった。

西貝が、久我に、ささやいた。

「恐ろしい精神状態だ」

久我は、ささやきかえす。

「むしろ、奇抜ですね」

西貝がいった。

「……乾老。……性格のちがいというのはえらいものだね。……小生は寅年生れだが、遺産のことなんか、とうに忘れていたよ」