Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きんろう

金狼

久生 十蘭

Leggi 金狼 (きんろう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.438 caratteri · 179 schermate

Aozora Bunko

「……第五府立のほうから、風呂敷包み……、風呂敷包みを抱えた女学校の先生がひとり……。紙芝居のチョンチョン……。子供が三人……。それだけ」

「路地の入口には?」

「だれもいなかった」

乾は、ふむ、ふむ、とうるさく鼻を鳴らしながら、

「……ま、いなかったとしておこう……」

と、いって入口のほうへ歩いてゆき、ほそ目にあけた扉のすきから頭だけだして、あちらこちらと通りをながめると、また鶴のそばへ戻ってきた。

「それで、どんな用事だ」

鶴がむっつりと、こたえる。

「電報がきたんだ」

キラリと眼を光らせて、

「なんといって」

「シャンハイニユクモヨウ。コウベ、トア・ホテル」

乾は膝の上へ頬杖をついて、しばらく黙っていたのち、藪から棒にたずねた。

「いま、何時だ」

腕時計に眼を走らせて、鶴がこたえる。

「七時十分」

乾が急にたちあがる。鶴の手首を握りしめながら、

「いいか、これからすぐ神戸へ発つのだ。七時三十分の汽車。あと二十分。金は?」

「五十円ばかし」

「よかろう。……(じっと、鶴の眼を見つめながら)……それから?」

ハンド・バッグを顎でさしながら、

「あの中にはいっている」

「よし!」