Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

Leggi 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 157.440 caratteri · 313 schermate

Aozora Bunko

天井から床下まで見たが、影も形もねえ」

八五郎は言葉せわしく説明するのです。

「お勝手口と椽側は開いてなかったのか」

「あの通り、念入りに締めたまんまで、戸のすき間からでもなきゃ出るはずはねえ」

「フーム」

平次も腕を組みました。六畳の居間は、いくらか荒らしておりますが、あとは八五郎と五人の下っ引が踏み荒したほかは、何んの変りもなく、行燈の灯が、静かに瞬いているのも、妙に物淋しく凄まじい風情です。

「親分、あっしの足が少し遅かったんだ。せっかく頼まれながら、姐さんをさらわれちゃ、首でも縊ってお詫びをするほかはねエ」

八五郎の萎れようというものはありません。

二人は何時の間にやら、お勝手に入っておりました。竈の上に、ダラリと下った引窓の綱。

「丁度宜い首縊り綱だぜ、八」

平次は日ごろにもない人の悪い冗談をいいながら、その綱を辿って閉めたままになっている引窓を見上げるのでした。

「そいつで首を吊るんですか、親分」

怨めしそうに見上げる八五郎の顔を、平次は擽ぐったく見やりながら、綱を引いてサッと窓を開けました。真っ黒な夜の空の断片がその窓から無気味に中を覗いております。