Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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うし

鎧櫃の血

岡本 綺堂

Leggi 鎧櫃の血 (うし) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 48.702 caratteri · 99 schermate

Aozora Bunko

今夜の余興に老人のむかし話を一度聴きたいと思ったからである。根が話好きの老人であるから、とうとう私たちに釣り出されて、物語らんと坐を構えることになったが、それが余り明るい話でないらしいのは、老人が先刻からの顔色で察せられるので、聴く者もおのずと形をあらためた。

まだその頃のことであるから、ここらの料理屋では電燈を用いないで、座敷には台ランプがともされていた。二階の下には小さい枝川が流れていて、蘆や真菰のようなものが茂っている暗いなかに、二、三匹の蛍が飛んでいた。

「忘れもしない、わたしが二十歳の春だから、嘉永六年三月のことで……。」

三月といっても旧暦だから、陽気はすっかり春めいていた。尤もこの正月は寒くって、一月十六日から三日つづきの大雪、なんでも十年来の雪だとかいう噂だったが、それでも二月なかばからぐっと余寒がゆるんで、急に世間が春らしくなった。その頃、下谷の不忍の池浚いが始まっていて、大きな鯉や鮒が捕れるので、見物人が毎日出かけていた。

そのうちに三月の三日、ちょうどお雛さまの節句の日に、途方もない大きな鯉が捕れた。五月の節句に鯉が捕れたのなら目出たいが、三月の節句ではどうにもならない。