Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

いんじゅう

陰獣

江戸川 乱歩

Leggi 陰獣 (いんじゅう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 66.968 caratteri · 131 schermate

Aozora Bunko

「どうしました。何を見たんです」

私が驚いて尋ねると、静子は片手では、まだしっかりと私に抱きつきながら、一方の手でガラス窓の外を指さすのだ。私も一時は春泥のことを思出して、ハッとしたが、だがそれは何でもなかったことが、間もなく分った。見ると窓の外の庭の樹立の間を、一匹の白犬が、木の葉をカサカサ云わせながら、暗闇の中へ消えて行った。

「犬ですよ。犬ですよ。怖がることはありませんよ」

私は、何の気であったか、静子の肩を叩きながら、いたわる様に云ったものだが、そうして何でもなかったことが分ってしまっても、静子の片手が私の背中を抱いていて、生温い感触が、私の身内まで伝わっているのを感じると、アア、私はとうとう、矢場に彼女を抱き寄せ、八重歯のふくれ上った、あのモナ・リザの唇を盗んでしまったのである。そして、それは私にとって幸福であったか不幸であったか、彼女の方でも、決して私をしりぞけなかったばかりか、私を抱いた彼女の手先に、私は遠慮勝ちな力をさえ覚えたのであった。

それがなき人の命日であった丈けに、私達は罪を感じることが一入深かった。二人はそれから私が自動車に乗ってしまうまで、一言と口を利かず、目さえもそらす様にしていたのを覚えている。