Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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がん

雁

森 鴎外

Leggi 雁 (がん) di Mori Ōgai (森 鴎外) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 73.950 caratteri · 147 schermate

Aozora Bunko

可笑しいのは、池の端へ越した爺いさんの身の上で、これも渡世に追われていたのが、急に楽になり過ぎて、自分でも狐に撮まれたようだと思っている。そして小さいランプの下で、これまでお玉と世間話をして過した水入らずの晩が、過ぎ去った、美しい夢のように恋しくてならない。そしてお玉が尋ねて来そうなものだと、絶えずそればかり待っている。ところがもう大分日が立ったのに、お玉は一度も来ない。

最初一日二日の間、爺いさんは綺麗な家に這入った嬉しさに、田舎出の女中には、水汲や飯炊だけさせて、自分で片附けたり、掃除をしたりして、ちょいちょい足らぬ物のあるのを思い出しては、女中を仲町へ走らせて、買って来させた。それから夕方になると、女中が台所でことこと音をさせているのを聞きながら、肘掛窓の外の高野槙の植えてある所に打水をして、煙草を喫みながら、上野の山で鴉が騒ぎ出して、中島の弁天の森や、蓮の花の咲いた池の上に、次第に夕靄が漂って来るのを見ていた。爺いさんは難有い、結構だとは思っていた。しかしその時から、なんだか物足らぬような心持がし始めた。それは赤子の時から、自分一人の手で育てて、殆ど物を言わなくても、互に意志を通じ得られるようになっていたお玉、何事につけても優しくしてくれたお玉、外から帰って来れば待っていてくれたお玉がいぬからで