Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate

Aozora Bunko

「なぶり殺しもぜひがない」

「衰えきった老いぼれ、大したことはあるまい。じゃ一刻も早く殺してやるほうが、せめて殺生の罪も軽かろう。おい、天堂」

と、お十夜は先に立って、

「どこから柵を超えるんだ?」

「もっと上だ、この辺は一帯に柵と激流が一緒になっているから、とても乗り超えてはゆかれない。もう少し上へ登ると、山の腹へかけて流れに添っていない所がある」

「よし!」と、周馬も前へ出た。

周馬の気負ったうしろ姿を見ると、天堂はニッと笑った。決して、悪い意味ではなかった。――この男も可愛いやつだ、そう考えて、和田峠で癇癪まぎれに、煙管をぶつけた時のことを思いだしたのである。

「最初は、ひどく油断のならない男と考えていたが、決して、ムキになって憎むほどの人間じゃない。むしろ、愛すべき稚気さえ持っているじゃアないか! こうして世阿弥を殺すにも先に立ってゆくんだからな」

と、かれの背なかを眺めながらゆく。

お十夜は幾度も剣山を踏んでいるが、周馬は初めてなので、嶮しいのにあきれている、倶利伽羅坂でもかなりヘトヘトになった。だが、ひと度冷やかな山気に面を吹かれると、その疲れも忘れてしまう。