Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖 (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.957 caratteri · 114 schermate
西行塚の平地へきて、ホッと一息入れながら、弦之丞の天蓋がクルリと後ろへ振り向いた途端に、その影は両端の草むらや岩の根に、サッと野分に吹かれた草のようになびいてしまう。
一刻ばかり前に、お綱と万吉とが立った国分寺の触札は、悪魔の囮のように弦之丞の目を招いていた。そして彼もなにげなくその柵の側へ足を吸いよせられて行った。
「…………」
笠の裡から黙読している弦之丞には、さしたる驚動も見えなかった。むしろ、当然こうあるべきこととうなずいてもいる風。
路傍の一草のごとく、それを見て去らんとすると、その刹那だ! 七本松の黒々とわだかまった闇の蔭にシーッと息をこらしているかのような氷刃の鋭気。
踵をかえして七、八歩、うしろを見るといつのまにか、そこにも狼群のような原士が、兇刃を植えならべて、じわじわと、静から動へ移らんとする空気をみなぎらしている。
左右の草むらにも閃々たる伏刃。
坂の上、坂の下、四方は全き剣の垣だ。法月弦之丞は、もう一歩でもゆるがせにそこを動くことはできない。
すると。
どう考えたか弦之丞、足もとの岩の上へ、ゆたりと腰を下ろしてしまった。
同時に、天蓋をぬぎ掛絡をはずし、そして、一本一本の指を握って折り曲げた。