Classici giapponesi con furigana
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わし
鷲
岡本 綺堂
Leggi 鷲 (わし) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 144.476 caratteri · 290 schermate
それは小春日和のうららかに晴れた日の午すぎで、当主の勘次郎は出番の日に当っているので朝から留守であった。隠居の勘十郎も牛込辺の親類をたずねて行って留守であった。兜はそのあいだに紛失したのであるから、隠居と主人の留守を窺って、何者かが盗み出したのは明白であったが、座敷の縁側にも人の足跡らしいものなどは残されていなかった。ほかにはなんにも紛失ものはなかった。賊は白昼大胆に武家屋敷の座敷へ忍び込んで、床の間に飾ってある兜ひとつを盗み出したのである。
その当時の邦原家は隠居とその妻のお国と、当主の勘次郎との三人で、勘次郎はまだ独身であった。ほかには中間二人と下女ひとりで、中間らはいずれも主人の供をして出ていたのであるから、家に残っているのはお国と下女だけで、かれらは台所で何か立ち働いていた為に、座敷の方にそんなことの起っているのを、ちっとも知らなかったというのである。
盗んだ者については、なんの手がかりもない。しいて疑えば、日ごろ邦原家へ出入りをして、その兜を見せられた者の一人が、羨ましさの余り、欲しさの余りに悪心を起したものかとも想像されないことはないので、あれかこれかと数えてゆくと、その嫌疑者が二、三人ぐらいは無いでもなかったが、別に取留めた証拠もないのに、武士に対して盗人のうたがいなどを懸けるわけにはゆか