Classici giapponesi con furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Leggi 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.256 caratteri · 77 schermate
山の手の古庭はいうまでもない。落葉は庇の上にも縁の下にも一面に散りつもっていた。わたしは病後の余生を送るに必須な調度と蔵書の一部のみを残してその他のものは庫の中に蔵した先人遺愛の書画骨董から庭の盆栽に至るまで、家に伝わるものは悉く売払って身軽になりたいと思った。病余孤独の身は家を修むる力なく蔵書は唯蠧の喰うにまかすより外はなかったからである。多年出入りの竹田屋という古書肆の主人が毎日大久保の庭の上に家財道具を運び出して売るものと残すものとを択り分けてくれた。
庭一面の落葉は道具の調べや荷づくりをするには蓙や薄べりを敷くよりも遥に誂え向きなものであった。誤って花瓶や盞を地に落した時も散り敷く落葉は布団のように軟なために瑕一ツつきもしなかった。終日樹の下に画幅や古書を投棄てて置いても乾いた枯葉の為に少しも湿める虞がなかった。
十二月もいつか冬至という日――その年は冬至の夕方から雪が降った――築地へ引移って荷物を解くと衣類や布団の間にも落葉がはいっていた。鼠不入の中にも落葉がはいっていた。本箱の中にもまた落葉が舞い込んでいた。一枚々々皆見覚えた樹木の葉である。