Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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さとう

麻布襍記 ――附・自選荷風百句

永井 荷風

Leggi 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.256 caratteri · 77 schermate

Aozora Bunko

冬至

閉めきった窓のすき間から月の光が銀の糸のようにさし込んでいる事もある。

帽子もとらず外套も着たまま捜り寄って燈火をつける。

机の上には開かれたままの書物、書きかけた草稿、投げ出されたままの筆やパイプ。長椅子の上には既に過去となった其の日の半日午睡の夢をやどさせた羽根布団。汚れた敷物の上には脱ぎすてたなりの上靴。破れた屏風の書画。これ等の凡て取散らされた室内の光景――わたしという一個の老書生の生活は、わたしの痩せた手先に点じられる燈火の光を得ていかにも寂しくいかにも静にわたしの目の前に照し出される。

悔恨と憂悶と希望と妄想と、あらゆる中年の感慨は雲の如くに叢り湧く。わたしは此の沈痛なる深夜の感慨をよろこぶ。此の感慨あるが為に深夜独り帰る時わたしの書斎ほどわたしの身に取って世になつかしく思われる処はない。

冬至

年の中で日の最も短いのが冬至である。日が短ければ夜が最も長い。

今日は冬至だというとわたしは何がなしに老たる人の平穏静安な生涯を想像する。苦労があっても顔には出さず悠然として天命を待つ老人の姿を想像する。それ等の事から年中時令の中でわたしは冬至の節をば正月や七夕や中秋彼岸なぞよりも遥に忘れがたく思う事が多い。