Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
雪の中をおりおり、赤沢の持子が、卵や何かの食料、家からの荷物、友達からの手紙、そういった物を、届けてくれる。帰りには又、こちらからの音信など、ことずける。これは大切で、かつ楽しみな使者だ。私はその場で、堂守から、手紙の代筆を頼まれて、苦吟したりもする。卵はすぐ凍ってしまって、ひびが入る。剥けば、貴しや、氷の白ら珠。それを煮ると、白味が焦げついても、黄味のしんはジャリリ、と冷たい歯ごたえ。それが、この頃では、ひびから白味が融けて、あふれ出し、それなりまた凍って、つららになる。これが日毎、くり返えされる。一度、母の心ずくしで、小包の瓶の中は、なんと、好物の「あんこう」とは。凍りついた中味をあたためれば、肝や独活や焼豆腐まで、そっくり揃って、そのまま即席のあんこう鍋。夜の雪を聞きながら、この珍味で、静かに独りあげる盃――けだしこれなど、この山ごもりでの、おごりの絶頂であったか。
二月も末となれば、春の気配はようやく濃い。朝など、どことなく、冬にはなかった、一種、匂いのある空気が、ただよってくる。しっとりした、有機性の薫りだ。小寒く、さわやかで、もの懐かしくもあり、なにかしら愁い心をさえ誘うような……