Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
鳥は、この谷間は多い方ではないらしいが、ガッチ(かけす)や百舌鳥の声が、ひときわ耳だつ。椿象がランプに集まって特有の臭みを放つこともあるが、あたりは、物の乾き収縮する時に放つ、あのかおり――軽くて鋭い、そして一種気高い感のする香気、に満ちてくる。万物の伸展する、春から夏へかけての、生き生きしてはいるが、重苦しい、水気の多い、いきれるような匂いとは、まったく反対な、あのサラリとして、どこかこの世ならぬ尊ささえ感じられる、霊香とでも言いたいかおりだ。極端な例をひけば、汚ない話だが、厠の臭気にまで、その気味がある。
こうして、色も、光りも、音も、香も、ことごとく身にしみるような調子を帯びる。まことに「秋」の来たことが、まざまざと感じられるのだ。そうなるとまた、天候がひどく変り易い。ことに、見える空というのが狭いだけに、変化はいっそう急激だ。少し雲行きが速いナ――と思うと、一瞬のひまに空の色は、白が黒と一変する。そして雨が、山をかすめてそそいでくる。雨の中に雲が湧く。湧くともなしに湧く。そして数多の手をからみ合って、山へ吸い着くようにして這い廻りはじめる。