Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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だいこん

だいこん

久生 十蘭

Leggi だいこん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 153.732 caratteri · 303 schermate

Aozora Bunko

あたしは廊下へ出て五分待っていた。入って行くとパパはじぶんの前のクリュブをさしていった。

「そこへお掛けなさい」

へんにていねいなので、あたしはたじたじになった。逃げだすほうがいいようだ。

「いそがしいなら、またあとで」

「まあいいから、そこへおかけ」

あたしは掛けながらでたらめをいった。

「うちでもいよいよ武装解除か。あのピストルは接収されるんでしょう。もう射撃会にも行けないんだね」

「敗けた以上、それくらいのことは当然だ。用事というのはそんなことなのか」

パパは泣いていたんだ。むやみにひッこすったのだとみえて、鼻のあたまや頬っぺたがひっぱたかれたように赤くなっていた。

パパがひとりで泣いている。またなにかあったんだろう。ひっぱたかれたようなパパの赤い頬を見ているうちに、茶話会のこともダンスのこともどうでもよくなった。あたしがいった。

「パパ、泣いてたの」

「行為としての戦闘は終ったが、戦争は終ったわけじゃない」

「そうですよ、パパ」

「ここで軍部がクウ・デタでもはじめたら、日本もご皇室もそれでおしまい。なにひとつ残りゃしない。もしそんなことになったらと思うとパパは泣かずにいられない」