Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

Leggi ちくしょう谷 (ちくしょうだに) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 69.788 caratteri · 138 schermate

Aozora Bunko

呼吸が苦しくなったように、唇があいて、息づかいの荒くなるのが聞えた。

――おれは無慚なことをしている。

隼人は歯をくいしばった。

――だがこれはどうしてもやらなければならないことだ、これは兄へのたった一つの供養であり、西沢を立ち直らせるためにも、避けてはならないことだ。

隼人は矢を射かけられたことを思い、頭上から岩を落されたことや、かけはしでの出来事を思い、また、死んだ唖者娘いちのことを思った。だが、怒りや、憎悪感は起こらなかった。

兄に対してしたことをも含めて、西沢半四郎はみじめに敗北している。これらのことが誰にも知れずに済んだとしても、彼自身、自分がみじめな敗北者だということは、骨に徹してわかっているだろう。可哀そうなやつだ、と隼人は思った。

西沢は手紙を読み終った。

彼はひろげたままの手紙を膝に置いて、頸の骨の折れるほど低く、頭を垂れた。それは切腹をした者が、介錯の刃を待つ姿勢そのままにみえた。

「その手紙は西沢が焼いてくれ」と隼人が咳をして云った、「やむを得ない事情で、小池帯刀にだけは読ませたが、ほかに読んだ者は一人もない、小池が他言しないことは云うまでもないし、手紙を焼いてしまえば証拠はなにも残らなく、それでこれまでのことは縁が切れるのだ」