Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちゃん

ちゃん

山本 周五郎

Leggi ちゃん di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.377 caratteri · 45 schermate

Aozora Bunko

九

とつぶやいた。そのとき遠くから鐘の音が聞えて来た。白かね町の時の鐘だろう、数えると八つ(午前二時)であった。聞き終ってから立って勝手へいった。

勝手は二帖の奥になっている。音を忍ばせて障子をあけ、手拭掛けから乾いている手拭を取り、それで頬冠りをした。そうして、勝手口の雨戸を、そろそろと、極めて用心ぶかくあけかかったとき、うしろでお直の声がし、彼はびっくりして振返った。

「どうするの」お直は寝衣のままで、暗いから顔はわからないが、声はひどくふるえていた、「どうするつもりなの、おまえさん、どうしようっていうの」

「おれはその、ちょっと、後架まで」

お直はすばやく来て彼を押しのけ、三寸ばかりあいた戸を静かに閉めた。

「後架へゆくのに頬冠りをするの」とお直が云った、「さあ、あっちへいってわけを聞きましょう、どうするつもりなのか話してちょうだい」

九

二人は二帖で向きあって坐った。行燈は六帖にあり、暗くしてあるから、お互いの顔もぼんやりとしか見えない。それが重吉にはせめてもの救いで、固く坐ったまま、声をひそめてわけを話した。口がへただから思うとおりには云えないが、とにかく話せるだけのことは話し、どうかこのままゆかせてくれ、と頭をさげた。