Classici giapponesi con furigana
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みなかみきこう
みなかみ紀行
若山 牧水
Leggi みなかみ紀行 (みなかみきこう) di 若山 牧水 (わかやまぼくすい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 102.087 caratteri · 203 schermate
然し、求めて彼等から危害を加えることはあるまい。唯だこちらの気持、その中にいて動ぜぬ気持だけである。それだけの信念を持ち得るかどうか。まんざら持てないこともない、と平常の自分を考えながら私は思った。一夜だけならば知らず、五日十日となると唯だの興味だけの事ではなくなるだろう、そうなれば……。
ふとした思いつきから、いつか本気になってその天幕の中で勉強するという事にまで空想して行っていた時、傍らの一人は私を呼びかけた。
「ねえ先生、そんなに野宿に心残りならこの六月か七月かにも一度いらっしゃい。その頃なら野宿だって出来ますよ。それにその頃だと万次郎は石楠木の花ざかりですからね」
単に万次郎岳での野宿の事ばかり考えていると思ったか、斯う云って彼は慰めて呉れたのであった。石楠木も此処の名物であることを思い出しながらなるほどその頃の山もいいだろうと思った。そしてなおひそかに天幕の空想を追おうとした。が、いつかそれも本気ではなくなっていた。
池には飛び跳ねる小魚もいぬのであった。風は幾らか凪いで来て、池の輝きも薄れた。唯だひっそりとした篠山の向うに垂れた蒼空の重たい霞、池の左手に突き出て来ている雲の様な落葉樹の端、すべてが唯だ静かであった。