Classici giapponesi con furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate
』
『そこなのですよ。狭山と云う想像を根こそぎ打ち壊わしている一つの事実こそ、同時に、僕の命をほしがる敵が意外にも恐るべき奴であった事を証拠立てているのです。と云うのは、昨夜はじめてそれと思い合せたのですが、よくよく考えて見ると実は、「スペエドのジャック」の電話は、ズーッと以前、左様恰度七年前に確に一度聞いていたのでした。しかもそれは上海でです。七年前の上海――狭山と何の拘わりもあろう筈がなかろうじゃありませんか。』
『上海?――』
西村は瞬間、かすかに顔色をうごかした。
『そうですよ。上海でです。僕の生涯中でおそらく一番いんさんな時代のことでした――お聞きください……』
と、清水は、古い記憶をそろそろとほぐし出す人の寂しい、ぼんやりとした眼ざしをしながら語りはじめた。
『……その頃――長らくつづいた世界戦争がやっと終りを告げた年の春も末の頃でした。僕は、当時、ひと頃はずいぶんと人気を呼んだ暁星歌劇団のテノール歌手をやっていたのですが、戦争終局と共に、ばたばたとやって来た大不景気のために最も有力な金主を失ってしまった結果、おまけに肝心な客足はゲッソリと減るし、到頭一座はご多聞に洩れず、何れあじけない旅烏とならなければなりませんでした。