Classici giapponesi con furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate
一月と経たない中に、日にたった数人のお客しか呼べない場合があった。
私はそれで、それをば幸いに、殆ど自分がその風船の主ででもあるかのように、寛いだ気持で空の楽しい一時間を費すことが出来た。
地上五百米突の高さから見晴した文明都市の光景は、それこそ一番素晴らしいパノラマの眺めである。凡そあらゆる速力と物音とを失って、麗らかな日ざしを宿したうす塵埃のかげろうの底で、静かに蠕動するそのたあいもない姿を、私はこの上もなく愛した。
2
私は搭乗券を売る娘と顔なじみになった。
私たちはお互に挨拶をした。
――正直なところ、なんだってそう毎日々々、こんな風船に乗りにいらっしゃるのだか、あたしにはもうすっかり考えようがなくなってしまったわ。」
或る日、その娘は、軽気球から降りて帰りかけた私をとらえて、そう云った。
――それは、君に会いたいばかりにさ。」と私は答えた。
――まあ! 憎いことを仰有るのね。でもあたし、はじめは鳥渡そんな気がしないでもなかったけれど。ふ、ふ、ふ、ふ……。」
娘は蓮葉な声で笑いかけたのを周章てて呑み込むと、居住いを直しながら、低声で私に注意した。