Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate

Aozora Bunko

『空き車』の札は何処にも見当らなかった。

ところが、扉を開けて降りて来た運転手が、智子へ慇懃に挨拶をしたのである。

『お待ち遠さまでした。』

『はあ?……』智子はびっくりした。

『タクシィでございます。ただ今、表通りでクーペを御自分で運転していらした紳士の方から、そう云いつかってまいりました。あなたさまではございませんでしょうかしら?』

智子は、それで漸く合点することが出来た。

『ええ、あたし、――あたしよ。御苦労さま。』

草色天鵞絨のクッションの中に身を落ち込ませて、智子はホッとした。すると、何だか曾てない明るい嬉しさと一緒に、おかしさが込み上げて来て、ひとりでクックッ笑えてならなかった。

郊外の住居へ着いた時に、代金を払おうとすると、すでに浅原から貰ってあると云う運転手の言葉だった。

3

秋になって――

智子から、彼女が浅原と婚約したと云う話を唐突に聞かされた時に、母は遉におどろいた。娘の利発な思慮深い性質を充分信じていたので、その恋愛についても、危懼する必要は殆どないわけだったが、不運な想い出をもった母親にしてみれば、矢張り心もとなく思われたのであろう。