Classici giapponesi con furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate
二階の廊下へ出ると、はげしいガスの匂が鼻をついた。そして寝室の扉には鍵が卸りていた。(――まことにお誂え向きにも、郊外風の割にガッシリした和洋折衷の建築だったのである。)
浅原が岩畳な体ごとぶつけて、扉を押し破って入って見ると、果して瓦斯ストーヴ用の瓦斯の栓を開け放した儘、智子の母親は寝床の中で白蝋のように冷たく眠っていた。枕元に書置が載せてあって、次のようなことが辿々しく記されてあった。
――智子。
あなたと、礼介さんは決して兄妹ではありません安心して結婚していいのですよ。つまり、あの写真の人があなたのお父さんだと云ったのは、まるっきり嘘だったのです。…………そして、実を云えば、私があの人と結婚したと云うのも嘘なのです。ただ私たちは――私と松岡とは、田舎にいた時分、許嫁だったのです。その頃私は漸く物心がつきはじめた位の子供でしたが、それでも行く行く自分の一生を委せる夫はあの人以外にないものと信じていました。あの人も私を誰よりも愛してくれました。……
松岡は大学を出るとアメリカへ行きました。ほんの一年か二年と云う約束だったのにも拘わらず、三年経っても五年経っても一向戻って来ませんでした。