Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いーはとーぼのうがっこうのはる

イーハトーボ農学校の春

宮沢 賢治

Leggi イーハトーボ農学校の春 (いーはとーぼのうがっこうのはる) di Miyazawa Kenji (宮沢 賢治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 57.726 caratteri · 120 schermate

Aozora Bunko

)達二は胸をどきどきさせました。

草がからだを曲げて、パチパチ云ったり、さらさら鳴ったりしました。霧が殊に滋くなって、着物はすっかりしめってしまいました。

達二は咽喉一杯叫びました。

「兄※。兄※。牛ぁ逃げだ。兄※。兄※。」

何の返事も聞えません。黒板から降る白墨の粉のような、暗い冷たい霧の粒が、そこら一面踊りまわり、あたりが俄にシインとして、陰気に陰気になりました。草からは、もう雫の音がポタリポタリと聞えてきます。

達二は早く、おじいさんの所へ戻ろうとして急いで引っ返しました。けれどもどうも、それは前に来た所とは違っていたようでした。第一、薊があんまり沢山ありましたし、それに草の底にさっき無かった岩かけが、度々ころがっていました。そしてとうとう聞いたこともない大きな谷が、いきなり眼の前に現われました。すすきが、ざわざわざわっと鳴り、向うの方は底知れずの谷のように、霧の中に消えているではありませんか。

風が来ると、芒の穂は細い沢山の手を一ぱいのばして、忙しく振って、

「あ、西さん、あ、東さん、あ西さん。あ南さん。あ、西さん。」なんて云っている様でした。