Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
「よかろう。その代り、現金だよ」
そこで猿沢は十円札を三枚ぱっと出して、桂馬を買い取り、それをパチッと盤面に打ちました。
それから少し経って、猿沢はまた現金を出して、蟹江の銀と歩を買いました。それからまたまた、香車を二十円で買ったりしました。蟹江は現金がどしどし入るものですから、にこにこして持駒を手渡ししました。
それから三十分ほど経ちました。編み物をしていた夫人がまた顔を上げると、こんどは蟹江が深刻な顔をして考えふけっていて、見ると猿沢の手許には、十枚余りの持駒がうずたかく積まれているのでした。猿沢は得意げに天井を向いて、莨の煙の輪をふうっとはき出したりしているのです。
「猿沢君」やがて蟹江はいくらか口惜しげな調子で言いました。「桂馬をひとつ、ゆずって呉れないか」
「ああ、いいだろう。五十円だよ」
「五十円?」と蟹江は眼をぎょろりとさせました。「そりゃすごく高いな」
「うちじゃそんな値段なんだよ」
と猿沢は平気な声で言いました。蟹江はすこしためらっていましたが、しぶしぶ五十円出して、桂馬を受取りました。
それからも形勢はあまり良くならないと見えて、蟹江はしきりに身もだえして、その度に香車を買ったり歩を買ったりしました。