Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
犬は縁の下に首をつっこんでみたり、長者門の根元を嗅いだりして、また何となく何処かへ行ってしまった。犬は眼の下のところに傷を負っていた。つい近頃の傷であることは、黒くかたまった血の色がまだこびりついているのでも判った。それは白木の軍鶏につつかれた傷に違いなかった。その傷のためか、犬の動作は以前より神経質に敏感になっているようであった。硝子戸のこちらで彼が立ち上ると、犬はぎょっとしたように脅えて、発田の家の方に逃げて行ったりした。境の垣根の穴は、犬が自由に通れるだけではなく、この頃では人間でさえも楽に通れる広さになっていた。
朝になると、昨日一日食べた蜆のからを、牡丹の根にしくために、彼は庭に降りて行った。冬に入る営みらしく、牡丹の幹は茶色にささくれ始めていた。冬を越して、この花が開くまで、此の家に住んでいられるかどうか、彼にも予想できなかった。なるようになる他はない。そう思いながら、彼は下駄で蜆のからを踏みつけた。先日中山に書いた手紙の返事は、すでに彼の手に届いていた。もちろん彼の申し出をしりぞける文面であった。だからこの家を引越す当面のあては、今のところ無いわけであった。