Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
君もいっしょだったね」
「ええ。外には小雨が降っていた」
「雨が?」
「ええ。寒かったんで、僕は服の襟を立てて歩きましたよ。それでもずいぶん濡れた」
「おれは全然濡れなかったよ。おかしな話があるもんだなあ」
彼は冷えかけた紅茶をすすった。
「何かこんぐらかってるな。駅で構内タクシーをつかまえた。番号はQ二〇三九だ」
「よく番号まで覚えていますねえ」
「うん。これにはわけがあるんだ。君は途中で降りた。そして角の果物屋に入って行った」
「果物屋?」
「そうだよ。不二果物店と看板が出ていた。君はまっすぐそこに這入って行った。僕は自動車の後窓からそれを見ていたんだ」
今度は矢木が気味悪そうに、そっとカップを卓に置いた。
「ほんとですか。しかし、そんな筈はない」
「なぜ?」
「なぜって僕はあの果物屋と、半年前ぐらいだったかな、バナナのことで喧嘩をしたんですよ。大きい房の代金を払ったのに、うちであけて見たら小さい房が入っていた。そこであのおやじと大喧嘩をして、それ以来あそこでは買い物をしないことにしているんです」
「でも、僕は見たんだよ。この眼で」
二人はしばらく黙り込んでいた。やがて矢木が頭を上げた。