Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
する筈がない」
「いや。していたよ」
「でも、僕は競馬も花札もやったことはないんだぜ。やったことがないのに、話は出来ない」
ではあの晩、矢木と何の話をしたのか、もう彼には思い出せなかった。話したという記憶はあるが、その内容は消え失せている。
「すると勝負ごとは、何もやらないと言うんだね」
「そうは言わない。将棋なら少し指す」
また交差点で停った。運転手はタオルを出して、掌だのハンドルなどをごしごしと拭いた。タオルは汚れて、くろずんでいた。
「暑いね。旦那」
いらいらした声で、運転手が言った。
「いっしょに氷水を飲まないか。行きつけの店が、この先にあるんだ」
「そうだな」
いらいらした運転手に気をつけろと、誰からか言われたのを、彼は思い出した。早く家に帰りたいけれど、ここは我慢してつき合った方が安全かも知れない。彼は気弱く妥協した。
「では、そうするか」
車はそれから五百メートルほど走り、歩道にタイヤをすり寄せて停った。彼は車を出た。氷水屋の赤い旗はだらりと垂れ、のれんを分けてくぐる時、粒々のガラス玉が腕の毛をチクチク引き抜いて痛かった。氷をあつかう店のくせに、店内は街よりも暑かった。