Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
「氷イチゴ二つ」
そして運転手は店の隅に行き、古ぼけた将棋盤を持って来て、彼に向い合った。細いねむそうな眼が、彼の真正面にあった。
「旦那。一丁指そうじゃないか」
「なに。将棋を、ここでか?」
「そうですよ。あんたは指すと言ったじゃないか」
「指すとは言ったよ。しかし君とは――」
言いかけて、彼は口をつぐんだ。のっぴきならないものが、背中に迫っているような感じがした。
「何か賭けるのか?」
「うん」
細い眼がすこし大きくなった。眼球に赤い血管がチクチクと走っているのが見える。
「負けた方が、相手に最敬礼をする。それでどうだね。旦那」
「よし。指そう」
常務の白いぶよぶよした掌が、運転手の後頭部をぐっと押す。頭は圧力にあらがいながら、結局のめってしまう。ふん。あれか。そう思ったとたん彼は全身の弛緩の底から、妙な闘志が湧き上って来るのを感じて、運転手よりも先に、駒をぱちぱちと並べ始めていた。