Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
寒い街角を曲る時などにふとあの外套の感触や黄色い釦のことを想い出したが、かえってさばさばした清々しい気持がした。あの男とももう一度位逢うかも知れないと考えていたら、二三日経った日の夕方駅前の広場でバッタリ出会った。僕はその広場の一隅で三角籤を買ったりして遊んでいたのである。弱い冬の没日を背にしてあの男は外套を着て空のリュックを持ち、大きな足どりで広場を横切るところだった。僕は声を掛けて呼止めたのだ。
今日は彼は洒落たスキイ帽を冠りリュックをぶらぶらさせて近付いて来たが、ふと見ると外套の釦の中のひとつは剥取られ、ひとつぶらぶらと落ちかかっていた。彼は外套の胸を外らし、見下すような眼で僕を眺めた。何だか誠に落着いたふうである。
「釦はどうしたね」
と僕は訊ねた。彼もうつむいて釦の箇所をちらと見た。
「うん。剥取られたよ」
「喧嘩でもしたのかい」
「喧嘩、じゃない。もっと面白い話があるんだ。何なら聞かしてやろうか」
「たいして聞きたくもないけれど、その外套も一度は俺の物だったんだからな。一応顛末を聞いとく義務があるようだな」
男が行こうというので僕も連れ立って街角の喫茶店に入った。