Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
僕は自然に両手を後ろに伸ばして外套を脱がせ易い姿勢をとっていた。
「此処は何処だね」そのままで僕が聞いた。
「渋谷だよ。地下鉄の終点だよ」
男の声は矢張傷ついた獣のように苦しそうだったが、それでも僕から脱がせる作業の手は休めなかった。そういえば上の方に歩廊の天蓋が見えた。僕は歩廊の壁にあるベンチに寝ているらしい。
外套を剥取ると男は一寸僕の額に掌をあてて、元気で家に帰れよ、と言ったらしかった。そして歩廊を踏む靴鋲の音が遠ざかって行った。僕はそのまま再び深い眠りに落ちた。
翌朝のしらしら明けに眼が覚めたら、寒いの寒くないのってありやしない。僕の身体は洗濯板みたいにコチコチになって、暫くは起き上れもしなかったほどだ。凍死する一歩手前まで来ていたんだろうと思う。なくなったのは外套だけで、あとの物は全部残っていた。僕はしゃちほこばって駅を出、喫茶店で熱いココアを作ってもらって人心地ついた。外套そのものは無論惜しくなかったが、そのため凍死しそうになったことが口惜しかった。外套があると思えばこそ酔っぱらってあんな場所に寝る気になったんだろうから。
しかし口惜しかったのはその朝だけで、昼からはすぐ忘れてしまった。