Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
――人間だよ。
と誰かが応じた。誰だ、誰が落ちたというんだ、ざわめく声の中で、
――誰だっていいじゃねえか。明日の新聞読めば判るよ。
あののんびりした声だった。どっと笑い声が起った。俺の近くでも皆笑った。就中あの女は(おっさんに代って貰ったあの娘だ)キイキイという金属的な笑い声を立てて笑いこけたのだ。あの白い腿が笑いのために艶めかしく痙攣するのを俺ははっきり見た。
お前はその言葉をユウモアだと思うか。
俺は思わん。思わんが俺も笑い出していたのだ。俺は可笑しくはなかった。しかし笑いがしゃっくりのように発作的にこみあげて来るのだ。俺は扉口にしがみつき、全身をわななかせながらヒステリイのように笑いこけていたのだ。俺は涙を流しながら、ヒイヒイと笑いつづけた。終点につくまで俺は腹の皮の痛くなるほど笑いつづけていた。俺の外套から釦がひとつなくなっているじゃないか。おっさんがむしり取ったのに違いないのだ。あの善良な義侠心あふるるおっさんが、あれほどの努力の後、あの黄色い釦をひとつ握りしめて芋虫のように転げ落ち、線路脇に冷たくなって横たわっている処を思った時、俺は何故か笑いが止度もなくこみあげて来るのを辛抱できなかったのだ。