Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate

Aozora Bunko

人間、誰だって、その要素はあるのですから。

しかし、赤木医師の話は、後廻しにしましょう。問題は甚五のことです。

正確に言うと、彼は森甚五という名で、赤木医師が、

「甚五。甚五」

と呼ぶので、ぼくもそれに従いますが、うちの近くのタバコ屋のおやじです。小柄で顔色の悪い五十がらみの男で、いつも何かおどおどした感じの風態の人物です。この甚五は今でこそおどおどしているが、僕には想像出来ないけれど、かつては大いに威張っていた時期があったそうです。それは戦後のタバコ不足の時代で、丁度ピースやコロナが売り出された頃のことです。一日何箇と数を決めて売り出す。時間は午前の六時です。皆が行列して待っていると、六時少し前に表の板戸をがたがたとあけて、甚五は売場に悠然と坐る。すぐ売り始めるかと思うと、そうではない。傍の電熱器に乗せた薬罐をとって、自分でゆっくりと茶をいれ、お客は待たせっ放しにして、うまそうに茶をすする。時にはタンと舌つづみを打ったりして、調子がつくと一杯だけじゃなく、二番茶をいれる。お客はじりじりしているんですが、文句を言うと売って呉れないから、黙って辛抱している。