Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate

Aozora Bunko

やっと茶を飲み終ると、面倒くさそうな声で宣言する。

「おつりが要る人には売りませんよ。判ったね」

今日は何箇売り出すと初めから判っているし、その箇数だけの人間が並んでいるんですから、直ぐ売り出せばいいんですがねえ。わざとそういう意地悪をする。権力を誇示したいんですな。やがてお客の握りしめたお金が、次々タバコと交換に売場のガラス台の上に置かれる。冬の朝なんか、積み重なったお金から湯気がゆらゆらと立ちのぼっていたそうです。よほどお客の恨みと執念がこもっていたのでしょう。

しかしこの高姿勢も、タバコがたくさん出廻るようになると、とたんに通用しなくなったのも当然です。甚五としては、まだまだそんな状況は続くと予想していたのに、意外に復興が早かった。神通力を失った甚五はがっかりして、それに今まで意地悪をした連中から、ざまあ見ろと白い眼で見られるし、自分が坐ってたんじゃ誰も買いに来て呉れないので、とうとう売場を女房のフクに明け渡した。そして自分は外廻りの仕事を始めました。ぼくがここに引移って来た頃、ぼくはよく彼が鞄を抱くようにして、うつむき勝ちにとっとっと道を歩いている姿をよく見かけました。