Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate

Aozora Bunko

あるとすれば、しごく特別の場合でしょう。

蟹江四郎が猿沢佐介と知合いになったのは、もうずいぶん以前です。かれこれ二年にもなるでしょうか。しかしそれは、知合いになるのが当然であって、しかも初めはなんとなく顔見知りになり、やがてある夜、あることを中心として突然近付きになったのです。この二人の男は、ごく近くに住み合っている、近隣同士の間柄なのでした。お互いの玄関まで、歩いて三分とかからない、まったく同じ恰好の、まったく同じ大きさの家に、この二人はそれぞれ居住していました。

それは戦争中、某軍需会社の社宅だったという話でした。一面の畠のまんなかに、四角に土地を地均しして、そこに二十軒ばかりの同じ形の家が、行儀よく並んで立っています。敗戦後しばらくしてその会社は潰れ、この社宅も売りに出されたという訳でした。だからここは今は、社宅時代とは全く異なり、素姓も違えば職業も違う、雑多な世帯や家族の群落なのです。同じ一郭に住んでいるというだけで、お互いに通い合うものもほとんどない人々が、なんとなく顔をつき合わせて暮している恰好でした。

なにしろ畠のまんなかにぽつんと孤立した部落で、肉屋に三町、風呂屋に五町という不便なところですが、そうかといってこの部落の人々は、別段お互いによりそったり、団結したりする気持はないらしい。