Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate

Aozora Bunko

「それは鰈だろう。表が黒で裏が白。魚のくせに裏表があるなんて、奇怪な感じのものだねえ」

「そりゃ仕方がないさ。生れつきだもの」と蟹江は頬をふくらませて、鰈のために弁護しました。「僕なんかはこの魚が大好きだよ。味も良いし、やわらかだし、栄養も豊富だしさ」

「栄養たっぷりかも知れないが、顔が歪んでひねくれてるねえ」猿沢はライターを取出して、カチッと火をつけました。「うちでは、その魚は、もっぱら猫が食べる」

その時奥の椅子で久美子が、かすかに笑ったような声を立てたものですから、蟹江は急に面白くないような気分になって、箸を置こうとしました。すると莨の煙の向うから、猿沢はにやにやと笑って、あやまるように掌をふりました。

「いや、失礼、失礼。べつに君の肴に、ケチをつけるつもりじゃなかったんだ」

「僕だって、ケチをつけられたとは、思っていないよ、猿沢君」

ついうっかり相手の名を言ってしまって、蟹江は照れかくしにコップをぐいとあおりました。猿沢は笑いを浮べたまま、その動作をじっと見守っていましたが、やがて蟹江がコップを卓へ置くと、こんどは視線をそこに移して、コップの中で揺れる透明な焼酎の色を、もの珍らしそうに眺め始めました。