Classici giapponesi con furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Leggi ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.411 caratteri · 263 schermate
不安なような気もするし、また大丈夫のような気もする。でも久美子はやはり、女房持ちの男よりも、独身男に共感と関心を持つんじゃないかしら。
蟹江がそう考えるのは、こんなことがあったからでした。メチル問答の夜から二十日ほど前、彼が『すみれ』でひとり飲んでいると、久美子が何を思ったのか彼の傍につかつかと近づいてきました。そして、しずかな声でこう言ったのです。
「あら、ボタンがとれかかってるわ」
電車でもみくちゃにされて、脱れかかった外套のボタンを、久美子が眼ざとく見つけたらしいのでした。
「あたしが縫いつけてあげるわ」
そして針と糸でつくろってくれる間、蟹江は身体があたたかくなるような気分で、久美子の指の動きを眺めていました。心がうきうきして焼酎がいつもの倍ほども旨く感ぜられたくらいです。
「ありがとう。君は裁縫もうまいんだね」
ほほほ、と久美子は笑いました。そして親しそうな調子で言いました。
「あなた、独身なの?」
「ああ、そうだよ」
「不便でしょうね、ひとりだと」
そこで二人は独身ということについて、少しばかり会話を交しました。店の中はこの二人きりで、他には誰もいなかったのです。