Classici giapponesi con furigana
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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
Leggi 一寸法師 (いっすんぼうし) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 96.475 caratteri · 194 schermate
彼は蒲団の上にムックリと起き上って、ほとんど無意識のうちに、同じ記事を五度も六度もくり返し読んでいた。
「多分偶然の一致なんだろう。それに昨夜のは己の幻覚かも知れないのだから」
と強いて気を落ちつけ様としても、そのあとから直ぐに、あの奇怪な一寸法師の姿が――さびしい場末の溝川の縁に立って、風呂敷包を投げ込もうとしている、彼奴の物すごい形相が、まざまざと眼の前に浮んで来た。
彼はどうするという当もなく、何かに追い立てられる様な気持で、寝床から起上ると大急ぎで着換えを始めた。
どういう積りか、彼は洋服箱の中から仕立おろしの合のサック・コートと、春外套を出して身につけた。学校を出てからまだ勤めを持たぬ彼には、これが一張羅の外出着で、可成自慢の品でもあった。上下おそろいのしゃれた空色が、彼の容貌によく映った。
「マア、おめかしで、どちらへお出かけ?」
下の茶の間を通ると、奥さんがうしろから声をかけた。
「イイエ、一寸」
彼は変なあいさつをして、そそくさと編上のひもを結んだ。
併し、格子戸の外へ出ても、彼はどこへ行けばいいのか、一寸見当がつかなかった。一応警察へ届けようかとも思ったが、それ程の自信もなく、何だかまだあれを自分だけの秘密にして置きたい気持もあった。