Classici giapponesi con furigana
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あだうちさんたい
仇討三態
菊池 寛
Leggi 仇討三態 (あだうちさんたい) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.136 caratteri · 33 schermate
それは紛れもなく和田直之進だった。彼は、即座に名乗りかけて、討ち果したいと思ったが、兄のことがすぐに心に浮んだ。八年の間、狙いながら、肝心の場所にいあわさない兄の無念を想像すると、自分一人で手を下すことは、思いも寄らなかった。彼は逸る心を抑えながら、直之進が再び籠に乗るのを待ったのである。
彼は、敵の在り処を突き止めると、小躍りしながら、すぐ京を立って、伏見から三十石で大坂へ下った。が、その夜遅く、兄の宿っている高麗橋の袂の宿屋を尋ねたとき、不幸にも兄が大和から紀州へ回るといい置いて、三日前に出発したことを知った。彼の落胆ははなはだしかった。彼は、油で煮られるようないらいらしさで兄の帰宿を七日の間空しく待ち明かした。それでも、兄の忠次郎は、八日目に飄然として帰って来た。
兄は、弟から敵発見の知らせをきくと、涙をこぼして嬉しがった。兄弟は、その夜のうちに大坂を立って、翌朝未明に京へ入った。
が、翌朝、弟が敵の家の様子を探るため、その家の前を通ったとき、意外にも、忌中の札が半ば閉ざされた門の扉に、貼られてあるのを見た。弟は愕然とした。彼はあわてふためきながら、隣家について、死者の何人であるかをきいた。