Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いせのまき

伊勢之巻

泉 鏡花

Leggi 伊勢之巻 (いせのまき) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.617 caratteri · 35 schermate

Aozora Bunko

「はッ、あなた様にお客来にござりまする。」

夫人はしとやかに、

「誰方だね、お名札は。」

「その儀にござりまする。お名札をと申しますと、生憎所持せぬ、とかようにおっしゃいまする、もっともな、あなた様お着が晩うござりましたで、かれこれ十二時。もう遅うござりますに因って、御一人旅の事ではありまするし、さようなお方は手前どもにおいでがないと申して断りましょうかとも存じましたなれども、たいせつなお客様、またどのような手落になりましても相成らぬ儀と、お伺いに罷出ましてござりまする。」

番頭は一大事のごとく、固くなって、御意を得ると、夫人は何事もない風情、

「まあ、何とおっしゃる方。」

「はッ立花様。」

「立花。」

「ええ、お少いお人柄な綺麗な方でおあんなさいまする。」

「そう。」と軽くいって、莞爾して、ちょっと膝を動かして、少し火桶を前へ押して、

「ずんずんいらっしゃれば可いのに、あの、お前さん、どうぞお通し下さい。」

「へい、宜しゅうござりますか。」

頤の長い顔をぼんやりと上げた、余り夫人の無雑作なのに、ちと気抜けの体で、立揚る膝が、がッくり、ひょろりと手をつき、苦笑をして、再び、